藤井聡太竜王が史上最年少五冠に王手をかけた。1月29、30日の王将戦第3局で渡辺明王将を破り、3連勝。王将位獲得と快挙達成まであと1勝とした。
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22、23日の第2局では、藤井竜王が2時間28分の自身最長考の一手で快勝した。
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「レールに乗っちゃったな」
終局後の検討で、渡辺明王将(37)はそう嘆いた。1月22、23日の王将戦第2局は挑戦者・藤井聡太竜王(19)の完勝。七番勝負は藤井の2連勝となった。
将棋界における「冬の祭典」とでもいうべき王将戦。今期は国民的スーパースターの藤井が登場したこともあり、いつにも増して話題が多い。
藤井は竜王、王位、叡王、棋聖の四冠。渡辺は名人、棋王、王将の三冠。タイトル戦の番勝負において四冠と三冠がたたかうことは史上初だ。藤井がシリーズを制すれば、史上初めて、10代にして五冠達成。そんな夢のような物語が、いよいよ現実になろうとしている。
両者の対局数は本局で12局目を数える。一局一局を見れば熱戦が多く、いつもきわどい。しかし勝敗については、ここまで藤井が圧倒している。
第2局は渡辺が先手。主導権を握れるサービスゲームで、まずは渡辺の作戦が注目された。選んだのは、現代の主流戦法の一つ、角換わり。互いに攻めの銀を中段に繰り出していく、一触即発の激しい進行となった。
「どうなっているのかわからない局面が多かったです」
局後に藤井が語る通り、現代最前線の難しい局面が続いた。
■勝負所は1日目午後
王将戦の持ち時間は各8時間。2日制の長丁場だ。勝負所は1日目午後に訪れた。渡辺は打った角で歩を取る。しかしこの一手が波紋を呼んだ。大局観の明るさ、局面評価の的確さにおいて、渡辺は天下一品だ。しかし本局では珍しく、判断ミスが続いた。戦えると思った順がそうではなかったのだ。
観戦者はざわめいた。コンピューター将棋ソフト(AI)が示す形勢評価は早くも藤井のほうに傾いたからだ。