こうした裁判が「日本でこれまでになかった」というのは松澤登・ニッセイ基礎研究所常務取締役研究理事。ランキングと独占禁止法の関係に詳しい松澤さんは、食べログのようなプラットフォーマーにとって「ランキングは差別化する一つの柱」とみている。一方、運用者のみが知る情報の扱いをどう適正化していくかが課題と指摘する。

 欧州事情に詳しい松澤さんによると、グーグルが傘下の比較販売サイトのグーグル・ショッピングを検索画面の上位に表示した。EU欧州委員会は2017年にEU機能条約(EU競争法)違反として課徴金を課したという。グーグルの訴訟提起に対し、EU一般裁判所はEU競争法違反の判断を支持した。

 食べログ判決について、松澤さんは「チェーン店に不利になるところがあり、認定しやすかったのだろう」とみる。さらに、この事例は「透明性に欠け、不利益に変更しており、(判決に)違和感がない」とも話す。

 独占禁止法に詳しい植村幸也弁護士(日比谷総合法律事務所)も、今回の事例を「妥当な判決と思う」と話す。チェーン店の評価を下げたのに、合理的な説明が見つからないという。一方、プラットフォームは公正でないといけないが、アルゴリズムの変更では副作用も生じがちで、たまたま評価が下がることもあり得るという。植村さんは、一般的に被害者側が不当な変更だったと「立証するのは非常に難しい」とみる。似たような事例で「幅広く原告が勝てるのか、かなり難しいのではないか」と指摘する。

 食べログ問題では「コミュニケーションのあり方が課題」と前出の鈴木さんはいう。アルゴリズムや更新の詳細は開示できなくても、飲食店や利用者が納得できる説明をする努力が必要とみる。「説明できないとブラックボックスになり、操作しているのではと疑念が出てくる」(鈴木さん)。運用者が説明努力を怠ると「信頼関係を失うことになる」(同)。

(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年8月12日号

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