収容先の刑務所にたどり着き、女性だけの区画で抱き合う捕虜となったエチオピア軍の女性兵士たち(2021年7月2日、エチオピア・メケレ。撮影:千葉康由)
収容先の刑務所にたどり着き、女性だけの区画で抱き合う捕虜となったエチオピア軍の女性兵士たち(2021年7月2日、エチオピア・メケレ。撮影:千葉康由)

■捕虜を写したときの意外な思い

 千葉さんが写したティグレ内戦の写真は大きく評価され、イギリスの大手新聞、ガーディアンの「エージェンシーフォトグラファー2021」にも選ばれた。

 なかでも大きく扱われたのは、先に書いたエチオピア軍の兵士の捕虜の写真なのだが、それを撮影した際、千葉さんにはある思いがあった。

「これを目にしたとき、ほんとうに伝えたいな、と思ったんです。20年11月に戦闘が始まって以降、彼らは外部と連絡がとれず、消息が途絶えていたことでしょう。7000人も生き残ったなら、彼らの帰還を待つ家族への希望につながると思った。だから、できるだけ多くの人を写して、彼らの元気な姿を伝えたかった」

 ちなみに、ティンバーの写真はエチオピア政府の逆鱗(げきりん)に触れ、「再入国は不可能な状態みたいです。でも、そういう覚悟で撮っているのは、やっぱり、すごい」。

 千葉さんは現在、ケニア・ナイロビ支局に勤める一方、現地のスタッフらに写真を教えている。将来は日本に帰り、写真を志す高校生に何の手も加えないドキュメンタリー写真のすばらしさを伝えたいという。

アサヒカメラ・米倉昭仁)

【MEMO】千葉康由写真展「アライバル」
富士フイルムイメージングプラザ東京(丸の内) 2月2日~2月21日