ロシアからすれば、ウクライナが将来的にもNATOに参加しないという何らかの保証が欲しい。しかし、ウクライナにはNATOへの加入、そして西側陣営につくという国民的なコンセンサスがあり、それを踏みにじることは至難の業です。それに対してロシアはウクライナ国内に混乱を作り出し、軍事的な介入へと突き進むかもしれませんが、ギリギリまで外交的な交渉が繰り広げられると思います。

 この時期、ウクライナ国境近くは凍結している状態で、通行車両や機動部隊を持つロシアには有利です。ただし3月くらいから雪が溶けて沼地になり、機動部隊が動けません。ロシアが軍事的アクションを起こすなら、2月から3月初旬でしょう。

 ただし、北京五輪の前に軍事進攻に踏み込めば、習近平政権との亀裂は避けられないと思います。そう考えると、五輪が終わる2月20日以降が正念場になるのではないでしょうか。それでもロシアが五輪開催中に軍事進攻に打って出るとすれば、それはロシアが追い込まれている証拠だと思います。

 ウクライナ情勢は、巡りめぐって台湾や北朝鮮情勢にも大きな影を落とすことになるはずです。目が離せません。

姜尚中(カン・サンジュン)/1950年本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

AERA 2022年2月7日号

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