政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。
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世界がかなりきな臭くなっています。現在、地政学的なリスクが高いところがウクライナです。同時に東アジアでは台湾であり、今後の動向次第では北朝鮮が2018年の米朝首脳会談以前のような一触即発の危機を迎えるかもしれません。
米国はユーラシア大陸の西と東で、ロシアと中国という超大国と対峙(たいじ)せざるをえなくなりつつあります。いくら米国でも、二正面作戦は難しい状況です。裏を返せば、中ロの間にどのくらいの連携があるのかが大きなカギになりそうです。必ずしも中ロ関係は一枚岩ではないですが、対米、対NATO(北大西洋条約機構)を考えると、中ロの間に暗黙の連係プレーがあっても不思議ではないでしょう。
冷戦期は東欧に緩衝地帯がありましたが、ワルシャワ条約機構の解体後、NATOと直接対峙せざるをえなくなった今、ウクライナはロシアの生命線を守る利益線として、ロシアの安全保障を左右する試金石です。