「新現役交流会」のイベント風景
「新現役交流会」のイベント風景

 その両方を生かして、「元気な高齢者へ向けた仕事づくり」の分野で高い実績を上げ続けているシニアもいる。

 大手生保会社出身の保田邦雄さん(77)。専門家の役に立つアドバイスがほしい中小企業と、専門分野で10年以上の経験を持つベテランシニアを、お見合い方式でマッチングさせる独自の交流会をたった一人で作り上げた凄腕だ。

 事業のベースには、中小企業を支援する意思のあるベテランシニアが案件を求めて登録する国の制度(「新現役」登録制度)がある。

 制度は古く2003年から始まったが、肝心の中小企業とのマッチングがなかなかうまくいかなかった。

 保田さんは07年度から関わるようになり、すぐさま「本質」を見抜いた。

「支援を必要としている中小企業をどう見つけるかが勝負なんですが、中小企業のことをよく知っていないと、そこはわかりません。そうだ、地域の金融機関で中小企業と付き合いが深い信用金庫や信用組合を味方にしようと思いついたんです」

 しかも業界を調べると、生保の法人営業時代にカウンターパートだったお客さんが偶然にも信金中央組織の大幹部を務めていた。

「さっそく話を持ちかけて、意欲があってチャレンジ精神にあふれた都内の信金理事長を何人も紹介してもらいました」(保田さん)

 あとは、マッチングをどう工夫するかだ。参加する信金側にもメリットがあったほうがいい。そこで理事長に頼んで「支店長案件」にしてもらい、支店長自らに企業を選んでもらった。

 専門家の支援しだいで、その企業は成長し、ひいては融資が増えるかもしれない。中小企業の社長と信金支店長の2人が、応募してきた複数の「新現役」を面接するという、誰もやったことのない形式が採用された。もっとも「面接」と言っても、社長と支店長、そして「新現役」の3者は対等だ。

 金融機関を巻き込み、新しい面接方式を採用したマッチングは「新現役交流会」と名付けられ、年を追うにつれ実績を上げていった。5年前には有志で一般社団法人を立ち上げ、「ひとりぽっち」から脱却した。保田さんが言う。

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