「冬山の知識が浅い人が、軽い装備のままバックカントリーで滑って遭難してしまうケース。また、バックカントリーの経験が長い人でも、GPSのバッテリーが切れて自分のいる場所が分からなくなった例もあります。費用を請求しますと公表することで、『しっかり準備しなくては』という意識改善につながり、より安全に楽しんでほしいと思います」

 この担当者が言うように、バックカントリースキーは冬山登山と同様で個人の自由だが、自己責任が伴う行為。一方で、スキー場の管理区域内の立ち入り禁止エリアに故意に侵入するのは「ルール違反」だ。

 バックカントリーの愛好者からは、「自己責任を理解して、準備をしっかりして注意を払いながら楽しんでいる人はたくさんいる。『ルール破り』と混同しないで欲しい」との声が上がる。ただ、経緯がどうであろうと、捜索側の労力や費用について厳しい意見を持つ人はおり、一緒くたにされてしまいがちな側面もある。

 長野県内のスキー場関係者はこう考えを話す。

「遭難者に費用を請求する流れは、広がっていくのではないかと思います。ただ勘違いしてほしくないのは、お金さえ払えばいいという話ではありません。スキー場の管理区域で、滑走禁止の場所に入って行くのはもちろんダメ。バックカントリーについても、スキー場や自治体が滑走は危険だと訴えているならちゃんと聞いてほしい。そうではない山だったとしても知識や準備が必要で、軽いノリで入ってはいけないと思います。当事者の命の危険だけではなく、捜索側が二次災害にあう可能性だって否定はできないですから」

 野沢温泉村で遭難した男性は、過信を認め反省した様子だったという。

 自分はどうか。雪山に向かう前に、一度冷静に見つめ直しても良いかもしれない。(AERAdot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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