遭難時の捜索費用を補償してくれる少額の保険もある。ただ、今回の男性は10年ほど前から同スキー場に通い、コース外やバックカントリーで滑った経験があったようだ。

「上達したという過信があって、危険をかえりみずにどんどん進んでしまったようです。保険にも入っていませんでした」(同)

 野沢温泉スキー場では昨シーズン、コース外に出て遭難し死亡する事故が2件発生している。一人は家族に行き先も告げず、登山届も出していなかった。担当者は、「危険なので絶対にやめてほしいですが、それでもコースの外に出てしまう人は一向に減りません。(先の男性の件を含め)今年1月だけで3件の遭難が発生しました」と危機感を募らせ、こう実情を話す。

「自分は上手だと過信して単独でコース外に出る、しかも軽装備の例が目立ちます。また、誰かがコース外に出て行くと、そこにスキー板の跡が残ります。それを見た人が、こっちに行っても大丈夫そうだと誘発され、深く考えずに後に続いてしまうこともあります。条例を制定後、危険性だけではなく高額の費用請求の可能性についても周知し続けていますが、抑止力になっているとはなかなか言えない状況です」

 青森県の八甲田山系もバックカントリーが人気だが、無謀なスキーヤーらの事故が続いたことがあった。スキー場に関係する10社からなる「八甲田山岳スキー安全対策協議会」は、コース外や営業時間外の遭難者に捜索費用を請求する「八甲田ルール」を制定。2018~19年シーズンから運用している。

 捜索に当たった人員の日当3万円、ロープウエーの時間外運行費5万円……などだ。

 同協議会の担当者によると、コロナ禍前の19~20年シーズンは15件近い遭難救助があり、一日の捜索で一人に70万円を請求したケースもあったという。

 担当者は「冬山でバックカントリーを楽しみたいという人もいますので、そこを滑ること自体が悪いのではありません」と前置きしつつ、こう話す。

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捜索者が二次被害にあう可能性もある