石原氏と首相の話し合いを引き取る形で、16日からの皇太子さまのスペイン訪問で同席の機会がある森氏が、『皇太子さまに石原氏の考えをお伝えする』と口にした。
皇室は政治に巻き込まれることを極力嫌う。ましてや各国が争う五輪招致の舞台裏では、金銭スキャンダルも含めどろどろした思惑が渦巻くことも多い。
宮内庁も石原氏の発言を止める必要がある、と思ったのだろう。 皇太子ご一家を公私ともに支える野村一成東宮大夫が、「招致を呼びかけている運動というのは、政治的要素が強く、皇太子殿下がかかわることは難しい」と、否定的な見解を出した。すると石原氏は、7月4日の定例会見で、石原節を炸裂させた。
「木っ端役人がこんな、大事な問題を……」
「宮内庁ごときが決めることじゃない」
石原氏が言う「木っ端役人」とは、野村東宮大夫を指しているのは明らかだった。
7月17日の全国知事会の会見でも舌鋒鋭くこう言い放った。
「宮内庁のバカが余計なことを言っているが、五輪招致は国民が熱願することであって、宮内庁が反対する理由はないと思う」
「せっかくある皇室を私たちは大切にしてきたんだから、この際、『お国のために皇太子さん頑張ってくださいよ』と声をあげるのは当たり前」
元朝日新聞皇室担当編集委員の岩井克己氏は、こう話す。
「石原氏の過去の皇室への言動を振り返ると、誘致の切り札として当時の皇太子に支援を要求する行動は自己矛盾のようにみえます。しかし考えてみると、そうした皇室観だからこそ、ためらいも遠慮もなかったということでしょう」
都知事としても皇室との距離は遠かった。
たとえば宮中行事への出席率を見てみよう。
皇居の宮殿や赤坂御用地で催される宮中行事については、宮内庁を通じて三権の長や閣僚らとともに首都である東京都知事あてに招待状が送られる。主なものは(1)外国の国賓を宮殿で歓迎する「晩餐会」(2)春と秋の年2回、赤坂御苑で開催される「園遊会」(3)天皇誕生日に宮殿で行う祝賀・祝宴だ。
都庁担当を経て皇室担当に転じた前出の岩井氏はこう話す。
「鈴木俊一都知事が宮中行事にほとんど皆勤だったのが印象的でした。自宅で転倒して大けがをした直後にも額に大きな絆創膏をはってでも出席する律儀さでした。次の青島幸男知事もほとんど出席していたはずです」