AERA 2022年2月7日号より
AERA 2022年2月7日号より

■再び発展の起爆剤に

 市が2014年、市民1万人を対象に意向調査を実施した際には、約半数が回答し、「賛成」「どちらかといえば賛成」が66.7%で、「反対派」は20.6%と少なかった。だが、当時でも、49%が「費用面」を課題に挙げていた。

 1972年の札幌五輪は大成功に終わった。64年の東京五輪の開催で日本が戦後復興を成し遂げたように、札幌も五輪開催をテコに、地下鉄や高速道路などのインフラ設備を整え、現在の発展の礎を築いた。

 ただ、高度成長期だった当時と時代背景は異なる。巨費を投じて経済波及効果を期待する時代ではなくなりつつある。コロナ対策がかさみ、市財政は厳しい。市の借金にあたる市債残高は、20年度は過去最高の1兆987億円にのぼる。

 スポンサー収入が想定通り集まるかも不透明だ。

札幌五輪・パラリンピックの概要を発表する秋元克広市長。開催経費を抑え、市民の理解を得たい考えだ
札幌五輪・パラリンピックの概要を発表する秋元克広市長。開催経費を抑え、市民の理解を得たい考えだ

 昨夏の東京五輪では、開催に反発する世論に配慮し、スポンサー企業が五輪に関するCMを相次いで打ち切った。また、2030年は気候変動対策のまっただなかにある。環境に負荷をかける五輪を、その時代においても開催する意義を明確に打ち出す必要もありそうだ。

 30年五輪の招致にあたっては、ソルトレークシティー(米国)やバンクーバー(カナダ)など複数の都市が名乗りを上げている。そのなかで、札幌市は最有力候補とされる。東京五輪では、暑さ対策に伴う札幌市へのマラソンと競歩の会場移設を無事にこなし開催能力を示した。市は、意向調査を踏まえた正式な概要計画を5~6月にまとめる。IOCによる開催都市の絞り込みは年内に進む見通しだ。(朝日新聞北海道報道センター・佐藤亜季)

AERA 2022年2月7日号より抜粋