1972年の札幌五輪の開会式。大会は大成功を収め、札幌市の発展の礎を築き、市民の心にも刻まれた
1972年の札幌五輪の開会式。大会は大成功を収め、札幌市の発展の礎を築き、市民の心にも刻まれた

 札幌市が2030年の冬季五輪の開催実現に向けて、招致活動を進めている。早ければ年内にも開催地が決まるとみられるが、市民の間で五輪招致に賛否があるようだ。

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 札幌市は招致の機運を高めようと、今年1月26日から、ワークショップやシンポジウムなどの市民対話を始めた。

 ワークショップは小学校高学年や中高生らを対象に、2月中旬まで各回定員50人で計5回開く。五輪に出場したアスリートが体験を話すほか、市側が概要案を説明する。

 シンポジウムは2月20日に開く準備を進めている。新型コロナウイルスの感染状況にもよるが、旭川市出身のパラノルディックスキー指導者、荒井秀樹さんの基調講演や、東京五輪女子柔道金メダリストの阿部詩選手と東京五輪ソフトボールの金メダリストで昨季引退した札幌市出身の山本優さんのトークセッションを予定している。阿部選手、山本さんや秋元市長によるパネルディスカッションもある。

 こうした市民との対話を重視するのは、IOCが開催地を決める上で、地元住民の支持率を重視しているからだ。

 市は3月までに意向調査を実施し、競技会場が市内にとどまらないため、市民だけでなく道民を対象に開催の賛否を聞く。調査結果は「今後の進め方の参考」とし、市議会や他の自治体の意向も踏まえ総合的に判断するという。住民の意思を表した調査結果を軽んじればIOCの選考過程に大きな影響を与えるのは確実だ。市民の関心を高めることは、招致実現の前提だ。

 ただ、市民の間にも五輪招致に賛否がある。現時点では、全面的な歓迎ムードにあるとは、言い切れないようだ。

 地場コンビニ大手「セイコーマート」を運営するセコマの丸谷智保会長は「(72年の札幌五輪)当時と違い市民の関心は高まっていない」とみる。北海学園大2年の岩渕航平さん(20)は「五輪招致に伴う市の財政負担で、社会福祉関連の予算が不十分になるのではないか」と不安視する。

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