■三島由紀夫とは決裂

 また、北朝鮮拉致問題に関連して、「(外務官僚は)爆弾をしかけられても当然」と発言し物議を醸しもした。改正手続きによらず日本国憲法の破棄を訴えるなど、その勇ましいさまには枚挙にいとまがない。

 一方で、支持者側からもたびたび反発を受けた。

 知事就任前の毎日新聞で、日の丸、君が代を学校行事に強制するかと聞かれ、「日の丸は好きだけれど、君が代って歌は嫌いなんだ、個人的には。歌詞だってあれは一種の滅私奉公みたいな内容だ。新しい国歌を作ったらいいじゃないか。好きな方、歌やあいいんだよ」。

 また、靖国神社へのA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示した昭和天皇の発言(富田メモ)が明らかになった際には、06年7月21日の定例会見で、「お気持ちはよくわかります」などと語った上で、「私は今年も行きますが、戦争の責任者だと思っている人間を祈るつもりは毛頭ない。その者らは心の中で無視して参拝します」と述べ、右翼関係者の怒りを買った。

 石原氏は作家三島由紀夫と親交を結びながら、最後には決裂した。中曽根康弘元首相との対談本でこう述べている。

《フェイクな肉体をつくったために、肉体とそれを表現する行為のバランスがとれなくなり、ちゃちなクーデター計画を起こして死んでしまった。ただ、あれもまた、あの人のパフォーマンスの一つだったと思います》

 三島の死から半世紀。今なお、その発言や行動は論壇をにぎわせる。石原氏は後世、どう語られるのだろう。(朝日新聞編集委員・藤生明)

AERA 2022年2月14日号

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