どん底から復活の宇野昌磨は「愛される人間」　非業の死、デニス・テンとの知られざる絆

　デニス・テンさんの横で緩んだ表情をみせる宇野の写真がメッセージに添えられていた。宇野は関係者を通じて、この垂れ幕を寄せたのだという。

　会場に足を運んだデニス・テンさんのファンは、記者にこんなことを教えてくれた。

「テン君と宇野選手の関係性ってあまり知られていないけど、テン君が生きていたころに、宇野選手がとても優しくしてくれたって聞いたことあったんです。印象的だったのは、テン君が亡くなったときに出した宇野選手のコメントとエキシビションの滑りです」

　宇野の公式ホームページには、いまでも次のコメントが残っている。

＜突然の訃報を、信じる事が出来ません。

同じ試合で何度も戦い、何度も顔を合わせ挨拶をしていた事、

当たり前に思っていたことが突然出来なくなった事がまだ受け止められていません。

優しくて、礼儀正しくて、母国の為に尽くしてきて、

こんな事で失う人では無いと深い悲しみが込み上げてきます。

今は気持ちの整理がつかず、二度と演技を見る事が出来ないのが辛いです。

僕は偉大なるデニス・テン選手を生涯忘れません。

謹んでご冥福をお祈りいたします。＞

　また、デニス・テンさんのファンが印象に残ったという、2019年3月の世界選手権のエキシビションを振り返ってみよう。宇野は、上下黒の衣装に身を包んで、プログラム「See　You　Again」を氷の上でしなやかに舞った。シンガーソングライターのチャーリー・プースのヒット曲で、歌詞は亡くなった友人にお別れを告げるという内容。

　宇野自身は特に何も語っていないが、誰に向けたプログラムかはファンならば察したことだろう。こうした人間性が備わっているからこそ、周囲も支えたいという気持ちになり、天賦の才能や与えられた環境を実力に変えることができたのではないだろうか。

　ステファン・ランビエールコーチとタッグを組んで復調した宇野。昨年秋のNHK杯（グランプリシリーズ日本大会）では3年ぶりの優勝。試合後のインタビューでは、こう語っていた。