ヒントはリンクの外にあった。記者は2020年、宇野の弟の樹さんにインタビューをしている。以下に、週刊朝日2020年2月21日号の記事を引用する。
<この前、試合が終わって自宅に戻ってきた昌磨が、「卓球しよう」といきなり言ってきました。
制服のまま、1時間以上も付き合わされました(笑)。翌日が試験の最終日だったのですが……。昌磨にとっての、気分転換だったのだと思います。相手のミスを待つ戦い方をする僕に対して、昌磨は少しずつ修正してくる。そんな兄を見て、「努力って大事なんだなあ」って感じます。
兄はいつも努力家で理論派。「もう一回だけ」と卓球をしていても負けず嫌いな側面も見せます。(中略)
昌磨がメインコーチ不在で過ごしていたときも、そのことで相談を受けたことも話したこともありません。されても、僕がコーチを紹介できるわけでもないし、特に何も変わるわけでもない。いろんな報道があっても僕は気にしないし、何もしない。ニュースにも疎くて、昌磨の結果もLINEのニュースで知るほどです。
選手は試合で結果を出すことも大事かもしれませんが、僕は昌磨には自分が思うようにいてくれたら、と思っています。そのためにも僕自身も「いつもどおり」過ごそうと思っています。>
家族も認める努力家であること、また宇野を愛してやまない家族がいることが、宇野の競技人生には大きく影響していると感じたインタビューだった。宇野の活力の元、強さの元は自分が好きな人やモノに常に囲まれていて、それを本人がしっかり認識しているというところではないか。
宇野の人間性がよく表れたエピソードをもう一つ紹介したい。
ソチ五輪の銅メダリスト、デニス・テンさんが2018年7月、強盗に襲われて25歳で亡くなったことは、衝撃のできごとだった。母国カザフスタンで2019年10月に追悼のアイスショーが開かれた。
会場には、宇野のメッセージ入りの垂れ幕もあった。
「僕は、素晴らしいアスリートだったデニス・テンという存在を死ぬまで忘れることはないでしょう。宇野昌磨」