タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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日本でも、昨年から国が孤独・孤立対策に力を入れ始めました。あなたは、孤独を感じるのはどんな時ですか。世の中はあてにならず、自分の居場所がなく、ひとりぼっちだと感じることはありますか。職場で、学校で、地域で、親戚で、家庭でも、そういう深い孤独を感じている人はたくさんいるでしょう。「このつらさを誰にもわかってもらえない」と思う理由は人によってさまざまです。他人から見たら「そんなことぐらい」ということでも、当人にしかわからないしんどさがあるものですよね。それを安心して打ち明けられる場所が必要です。
孤独と似た言葉に、孤立があります。孤独はその人の胸の内に湧き上がるもので、孤立は社会的にあらゆるつながりから切れてしまっている状態です。いわば、誰にも見えない存在になってしまうこと。公的な支援を求めても冷たく門前払いされて、自ら世の中とのつながりを絶ってしまう人もいます。本人の心がけの問題に帰するのではなく、国や自治体がそういう見えない存在になってしまう人を作らないように施策を講じることが急務です。
今は困っている人を見ると、助けるに値する“有用な人材”か、同情するに値する“十分に不幸な人”でない限りはわざわざ助けてやる必要はない、甘えるな、という歪(ゆが)んだ“自己責任論”が跋扈(ばっこ)しています。それは長らく新自由主義的な施策を推し進めてきた社会で、人々が国から受け取ってきたメッセージでもあります。困っている人を嘲笑(あざわら)い差別に無頓着な政治家たちの発言や、人生の勝者のような顔をして弱者を見下す人物たちの放言にネットやテレビでしょっちゅう触れていれば、困ってもつらくても、誰にも頼ってはいけないと思うようになるでしょう。それは恥だと。孤独・孤立対策には「どのような言葉が語られるべきか」という視点も不可欠です。
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
※AERA 2022年2月14日号