また、感染者を受け入れる体制を事前に整備しておくことも重要だ。
「1年間にワクチンを3回も接種をする必要があるコロナは、ワクチンだけでは解決できないということです。ですから、検査して、治療するための体制が求められている。そのためには治療薬の確保、それから中等症以上や持病が悪化した患者さんのための医療、病床の確保を同時にやっていく。感染者数が多くなれば重症化率が減っても病床を必要とする患者さんが増えます。集約的に医療者が診ることのできる大規模集約医療施設を整えることが必要です」(同)
「秘闘」の中では昨年8月の時点で、田村厚労大臣から第6波についてこんな危機感が表されている。
<ワクチンで重症化率が10分の1に減ったとしても、感染者が10倍出たらダメだ。冬のコロナは怖い。コロナは冬のウイルスだと思って準備しないと、年末年始の医療は持ちません>
その後、21年10月に厚労省は第6波に備えて、11月末までに病床確保計画を見直すように通知を出した。第5波並みの感染状況となっても耐えられる医療提供体制の構築を目指すとして、病症確保のほか、臨時の医療機関の充実や、自宅療養者への対応強化の重視を打ち出した。田村厚労大臣が退任する直前のタイミングだった。
何とか体制を整えられた面もあるが、しかし、実際には現在、過去最多の患者数を出す流行が起こり、検査も間に合わず、医療が逼迫、救急救命が患者の搬送先を見つけ難い事態になっている。岡田氏はこう指摘する。
「田村大臣や厚労省は最後のほうに必死に取り組もうとしましたが、体制整備が間に合わなかった。そして、今、高齢者施設で集団感染が起きて、その患者の病院が見つからないというのが実態です」
今後も第7波、第8波と感染拡大の波がやってくることが懸念されている。また、新型インフルエンザなど別の感染症が流行するリスクもある。その時、日本は今回の対策の失敗を生かすことができるだろうか。岡田氏はこう語る。