荒川は中高生の頃からギャルに憧れていたが、校則が厳しかったため当時は黒髪のまま過ごしていた。芸人養成所に入ってから、髪を金髪に染めて念願のギャルデビューを果たし、そのキャラクターを貫いている。学生時代にギャルになりたいのになれなかったという経験をしているからこそ、現在の荒川には突き抜けた解放感があって、それが見る人の心に刺さっているのかもしれない。

 ぱーてぃーちゃんは、男性のすがちゃん最高No.1、女性の信子と金子きょんちぃの3人から成る男女トリオ。信子と金子きょんちぃのギャルコンビにすがちゃんが加わる形で、2021年4月に結成された。

 彼らの漫才では、ギャル2人がひたすら羽目を外して暴走するのに対して、ホスト風ファッションのすがちゃんがキザなしゃべり方でツッコミをいれていく。3人揃って両手で「イヴ・サンローラン」のロゴを真似た決めポーズを作ることもある。

 彼らは2022年の元日特番『ぐるナイ おもしろ荘』に出演して脚光を浴びた。有吉弘行からは「令和の安田大サーカス」というお墨付きをもらった。

 エルフの荒川の場合、キャラクターの完成度が高いので、ネタもトークも安心して見ていられるところがある。一方、ぱーてぃーちゃんの信子と金子きょんちぃは、良くも悪くも荒削りな素人っぽさを売りにしているようなところがある。そこがやや不安定で危なっかしいが、だからこそ新しいとも言える。

 オリエンタルラジオの藤森慎吾、EXITなど、チャラさを売りにしている男性芸人はこれまでにも存在していたが、その女性版とも言えるギャル芸人は今までほとんど存在していなかった。

 そんな中で、突然出現したエルフとぱーてぃーちゃんは、ギャル芸人の今後を占う試金石となるだろう。芸人以外のギャルタレントが多いことからもわかるように、もともとギャルとテレビは親和性が高いものである。持ち前の明るさを生かして、ギャル芸人にはお笑い界の新しい歴史を作っていってもらいたい。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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