その一方で、各地の大規模接種会場では、予約枠が余っているところも少なくない。たとえば愛知県の大規模接種会場の中には、10日現在で、14~20日の予約率が3.5%や4.2%という日のある会場も見受けられる。自治体が接種対象者に接種券を送る作業が追いついていないことに加え、接種券が届いていても、追加接種を見合わせている人もいるようだ。見合わせる理由の一つが、追加接種で多く使われているモデルナ製ワクチンではなく、ファイザー製ワクチンの接種を希望しているからだとみられる。
国内ではまずファイザー製ワクチンに対して特例承認が下り、輸入が始まったため、現時点で追加接種の対象となっている人のほとんどが、最初の2回の接種をファイザー製ワクチンで受けている。このため、異なるワクチンを打つことが不安だったり、モデルナ製の方が副反応が強く出るのではないかと心配したりする人がいるようだ。
最初の2回とは違う種類のワクチンを接種することを、「交互接種」と呼ぶ。政府や自治体は、「最初の2回がファイザー製だった人も、3回目はモデルナ製の接種を」と交互接種を呼びかけている。追加接種で使えるワクチンの多くがモデルナ製だからだ。
■mRNA推奨区別なし
東京都の場合、最初の2回の接種を完了した約1070万人の約75%がファイザー製を打った。一方、追加接種では約59%がモデルナ製になる見通しだ。
追加接種が進む海外でも、交互接種は行われている。特に、「ウイルスベクター」を使ったアストラゼネカ製やジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンを最初に打った人は、mRNAワクチンであるファイザー製やモデルナ製のワクチンを打つよう、推奨している国が多い。ウイルスベクターワクチンは、mRNAワクチンに比べて、最初のワクチン接種完了後の、発症や重症化などを防ぐ効果が低かったからだ。
ただし、同じmRNAワクチンのファイザー製とモデルナ製を区別して推奨している国はない。また、交互接種にリスクがあるという報告もない。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2022年2月21日号より抜粋