同書の執筆協力者の一部の医師たちとは、「SNS医療のカタチ」という活動名で一般公開講座の開催や、YouTubeチャンネルの運営などを通し、医学的に信頼できる情報を公開している。情報発信する際には特に気を使っていることがある。
「一般の人向けのオープンな場では、病気で苦しむ人や家族が、その情報によって傷ついたり、不快に感じたり、医療に対して不信感を抱いたりすることがないよう最大限配慮しています。もちろん、自分が所属する組織に迷惑をかけないことも大事です」
山本医師は研修医時代にさまざまな科を回るうち、自らの手を直接的に下して病気を取り除ける外科に魅力を感じ、患者数が多い消化器外科に狙いを定めた。現在は、北野病院の研究施設で、京都大学と共同で大腸がんの新薬の研究にも取り組む。大腸がんの患者から切除したがん細胞を使い、新薬の効果などを調べているという。
「一生学び続けたい」ほど生物好きだった少年は夢をかなえ医師になった。山本医師は、多忙極まりないその現状を憂いつつ、学び続けたいからこそ、今後の医師という仕事のあり方をこう考える。
「僕が医師になった当時は毎日夜中まで働いて、休日もほとんどないのが当たり前。そうした風潮は持続性を考えると無理があるし、結果的に患者さんの利益につながらない。医療が複雑化している今は、学ぶべきことがさらに増えています。それぞれの医師が専門特化し、医師以外のスタッフとも分業するチーム医療が、持続性の観点からもとても大事になっていくでしょう」
消化器外科医として、さらに治療や研究に磨きをかける。そして患者のため、後輩のため、今日も情報を発信し続ける。
山本健人(やまもと・たけひと)/北野病院消化器外科医師。2010年、京都大学医学部卒。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎)など著書多数。医療情報サイト「外科医の視点」を運営。
(文/中寺暁子)
※週刊朝日ムック『医者と医学部がわかる2022』から抜粋