一方、2018年度入試における女性差別を指摘された大学のなかには、今年の1月末になって、やっと受験料の返還手続きが始まったところもあるという。
「順天堂大を受験して不合格になり他大学に進学した元塾生に、受験料返還に関する書類が届いて、該当の1年分だけで約20万円戻ってくると聞きました。自主的に受験料等を受験生に返還した大学と、裁判になって手続きに時間がかかった大学とで対応が分かれましたが、不正があった大学を受けたことで、他に可能性のあった大学を受験することができなかったわけですから、お金だけの問題ではありません」(高梨さん)
文科省は、医学部医学科について、各大学の受験者に占める合格者の割合を男女別に集計し、それぞれの合格率を毎年公表している。表は、文科省が公表している男性合格率について、入試不正が問題化した2018年度入試から2021年度入試まで、大学別に4年間の男女の合格率の推移を示したものだ(全81大学のうち、女子のみの東京女子医大を除いた80大学)。1.00より多い大学は男性の合格率が高く、低い大学は女性の合格率が高いことを意味している。冒頭に示したように、2021年度入試全体では、男女の合格率が逆転した。
「比較すると、全体的には是正されているのがわかりますが、問題指摘を受けた私立大以上に男女の合格率の差がこの数年で小さくなっている国立大があることが気になります。文科省から性別による差別を指摘されたのはすべて私立大で、国立大はなかった。しかし以前から女子が受かりにくい国立大は明らかにあり、本当に女性差別がなかったのか、疑問が残ります」(高梨さん)
神戸大を除く国立大、公立大で入試不正がなかったかを改めて文科省に尋ねると、「不適切であると指摘した大学以外の71大学は適正に入試が行われていた」と否定。国公立大で女性より男性の合格率が高い大学が散見される理由については以下のように説明する。
「国公立大は、募集人数の母数が私立大に比べて少ない。その少ないところで男女の合格者数が数人入れ替わるだけで合格率が変わってくる。国公立大が年度によってばらつきがあるのはそういった理由があるのではないかと思っている」