bottom’allと車いすに乗っても裾がクシャクシャにならない短い丈のジャケットを合わせた「ニューフォーマル」(photo 日本障がい者ファッション協会提供)
bottom’allと車いすに乗っても裾がクシャクシャにならない短い丈のジャケットを合わせた「ニューフォーマル」(photo 日本障がい者ファッション協会提供)

――こうして生まれたのが、巻きスカート構造の「bottom’all」。目指したのは、「車いすユーザーのための服」ではなく、誰もが穿きたくなる服だ。

平林:障害がある人のためだけの服は、パイも少ないし流行りません。広がらなければすたれていく。だから、誰もがアクセスできる服を目指しました。巻きスカートは着脱が簡単です。例えば車いすユーザーの方がトイレに行ったとき。巻きスカートなら、脱いで、車いすの上に広げたまま自分はトイレに移って用を足して、また広げた服の上に座って巻き直すだけでいい。当事者からは、「ベッドに広げて、寝たまま着替えられる」という話も聞きます。

 もちろん、デザインも普通の巻きスカートそのままではなくて、ジッパーやボタンで前開きできるようにしたり、車いすに座ったときでもきれいに見えるように前側を少し長くしたり、工夫しています。「男性がスカート」というと抵抗がある人もいるでしょうが、それだってただの偏見だし、要は袴(はかま)と同じ構造と考えればそれほどおかしくない。bottom’allは手伝ってくれていた学生の提案で決まった名前ですが、「すべての人のためのボトム」という意味です。

■当事者の声きっかけ

――ほかにも、「腕に麻痺があっても袖を通しやすいジャケット」「車いすでも着脱しやすい着物」などさまざまな服をつくってきた。製作のきっかけは。

平林:どれも、当事者の方の声がきっかけになっています。腕に麻痺がある方に「オシャレな服に袖を通せなくて悔しかった」と聞いてジャケットをつくったり、「着物の脱ぎ着ができずにトイレに行けないから、成人式で振り袖は諦めた」という女性の声を聞いて、車いすでも簡単に脱ぎ着できる着物をつくったり。規約上、詳細は公表できませんが、この着物は昨年の東京オリンピック・パラリンピック関連でも使われました。

 服をつくるときには、「もともとあるデザインにどう機能性を入れていくか」という作り込みを考えています。これまでのユニバーサルデザインでは機能を先に考えた結果、「機能性はいいけれどダサい」ものになってしまうことがよくありました。私たちが目指すのは「ネクストUD」。ユニバーサルデザインをアップデートしたいですね。

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