東映映画「トラック野郎・望郷一番星」のロケ現場で、宮崎靖男さんとツーショットの千とせさん(宮崎靖男さん提供)
東映映画「トラック野郎・望郷一番星」のロケ現場で、宮崎靖男さんとツーショットの千とせさん(宮崎靖男さん提供)

 その頃、<俺が昔、夕焼けだった頃、弟は小焼けだった。父さんは胸焼けで、母さんはしもやけけだった>というギャグも注目を浴びた。童謡「夕焼け小焼け」のリズムに乗せたナンセンス歌謡漫談の1フレーズだった。

「戦後の貧乏生活の主食は、さつまいもでした。芋ばかり食べてると胸焼けするんですよ。そして母親は手が痺れるような冷水で炊事洗濯するからしもやけだらけ。そんな思い出を歌詞にしました。そんな経験は僕だけじゃない。それが共感を得たんじゃないでしょうか?」

レコード会社数社から同時期にオファーがあり、ビクターから76年5月、『わかんねェだろうナ(夕やけこやけ)』のタイトルでリリースした。

「何と160万枚のセールスを記録する大ヒット。NHK紅白歌合戦にこそ選ばれませんでしたが、東映からご指名が来ました」

 それが75年から菅原文太・愛川欽也のコンビで、東映のドル箱になっていた「トラック野郎」シリーズ。松竹の「男はつらいよ」シリーズの対抗馬として当時は「トラトラ対決」と話題になっていた。

「梅宮辰夫さんが文太さんのライバルになる第三作『望郷一番星』(76年7月公開)のオープニングシーン。ロケ現場は埼玉県の荒川沿い、さいたま市の秋ケ瀬公園でした」

 映画では、広島県西条の国道2号での検問。千とせ師匠扮するトラック野郎が過積載で検挙されるも、<俺が昔、夕焼けだった頃~>と歌い出して警官をけむに巻く……。

 その時の貴重なオフショット写真がある。千とせ師匠の右隣に写っているのは、ダンプ運転手ながら同シリーズ全10作のエキストラ運転手をキャスティングした宮崎靖男さんだ。

「売れっ子なのに腰が低くてね。写真をお願いしたら、二つ返事で撮らせてくれました」(宮崎さん)

 だが映画公開後、同じ浅草芸人出身の渥美清さんに会うや「この大馬鹿野郎!」と怒鳴られた。

「よりによって『トラック野郎』に出やがって!とブンむくれでした。松竹も出演依頼をしようと考えていたらしい。はい、同じく76年7月公開の第17作『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』です。もし、こっちに出てたら……。まあ、“タラレバ”ですけどね」

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