こうした事例に詳しい弁護士によると、Aさんのように出会った当日にいきなりホテルに誘われたり、性行為中に写真や動画を撮られたりしても、真剣な交際が始まったと信じてしまう女性は少なくないのだという。

 真剣な交際相手と考える人に対して、いきなり性的な写真や動画を撮ろうとはしないだろう。また最近ではマッチングアプリで出会った男から睡眠薬入りの酒などを飲まされ、性被害にあったという事件も数多く報道されている。

 それにもかかわらず、なぜAさんはマッチングアプリを利用し、そこで出会った男性に警戒心を抱けなかったのか。アプリの利用を怖いとは思わなかったのか。

 恋愛心理に関する著書がある精神科医で心理学者のゆうきゆう医師は、その理由として、

「人間は『自分だけは大丈夫』と思いがちな性質があるのです」と指摘する。

 例えば、宝くじ。年末ジャンボで1等7億円が当たる確率は「2000万分の1」と言われている。夢を買う、という言葉がふさわしい数字だが、奇跡を期待して買う人は多い。その心理状態をゆうき医師はこう解説する。

「確率が極めて低いという事実を知っている人はたくさんいるはずなのに、年末になると売り場に大行列ができますよね。これは『でも自分だけは大丈夫、当たるかもしれない』と思っている人がとても多いということです。つまり、マッチングアプリに関する犯罪などの報道を知っていても、同様に『自分だけは~』の心理が働き、利用をためらわないのだと考えられます」

 また、Aさんがその場で誘いや要求を拒否しなかったことについて、ゆうき医師は、

「人間は『目の前のできごと』を、『その先のことや未来のこと』より重く見る傾向があります」と話す。

 どういうことか。

「今、100万円をもらえる」と「10年後に200万円をもらえる」という2つの選択肢があったとする。長い目で見れば後者の利益が大きいのは明らかなのだが、前者を選択したがる人も多いのだという。

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「自分をわかってくれる人」は異性でなくてもいい