北京五輪では10組のきょうだい選手が日本代表として活躍した。どうしてこれほど多いのか。専門家や五輪経験者に聞いた。AERA 2022年2月28日号の記事を紹介する。
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涙を流す高木菜那(29)をそっと抱き寄せる妹・高木美帆(27)。北京五輪スピードスケート女子団体追い抜きで連覇を狙った日本の挑戦は、最後のカーブで菜那が転倒し、銀メダルだった。その後の2人の姿からは、姉妹の絆が感じられた。
北京五輪では、高木姉妹も含めて10組のきょうだいが日本代表入りしている。夏季の人気競技と比べて競技人口が少なく、盛んな地域も限られる冬季競技では、きょうだいそろって代表レベルの力をつけるケースが少なくない。
1992年アルベールビル五輪ショートトラック男子5000メートルリレーの銅メダリストで、アスリートの育成システムを研究する筑波大学准教授の河合季信(としのぶ)さんは言う。
「冬の競技は練習場所がかなり限られます。幼少期から親に連れられて各地を転戦する子も多い。そこに弟や妹が同行して競技を始め、一緒に上達する例はよく見聞きします」
■競い合いながら成長
河合さんによると、種目ごとに差はあるが、代表レベルの選手が競技を始めるのは夏季競技だと平均10~11歳、冬は6~7歳ごろだという。特に冬季競技は幼少期の環境の影響が大きい。
「きょうだいの存在は競技を始めるきっかけになるし、競い合いながら成長できるメリットも大きいでしょう」(河合さん)
きょうだいは最も身近なライバルであり、仲間だ。2010年、15歳でバンクーバー五輪に出た美帆を見て、菜那は悔しくてたまらなかったという。ライバル心もバネに、その後3大会連続で代表入り。18年平昌五輪では2冠に輝いた。今大会1500メートルで世界記録保持者の美帆が銀メダルに終わったあとは、「妹に金を取ってほしかった」と姉の顔ものぞかせた。