98年長野五輪のノルディック複合に双子の兄・荻原健司さんと出場した荻原次晴(つぎはる)さんも、「兄がいなければ僕に五輪はなかった」と断言する。健司さんはアルベールビル五輪の複合団体で金メダルを獲得し、翌年の世界選手権では2冠。「キング・オブ・スキー」と呼ばれた。
「毎日のように街中で間違えられ、苦い思いをたくさんしました。でも、その経験があって僕も競技に本気で取り組めたし、最も身近に世界最高の選手がいたから、健司を追うだけで世界の力を知ることができました」
■兄のおかげで落ち着く
スキーについて2人で深く話したことはほとんどないという。それでも、兄がいることで落ち着いて競技に臨めたと振り返る。長野五輪では、健司さんは4位、次晴さんも6位入賞を果たした。
「五輪に出られたのも、物おじせず戦って入賞できたのも健司が道を開いてくれたから。長野では、わずかなメダルの可能性にかけて勝負に出る健司の背中を祈るように見ていました。同時に、僕がこんなに苦しいなら健司も苦しいはず、ついていけるはずだと励みにもなりました。今大会、きょうだいで出場した選手が活躍しているのも、身近な家族と切磋琢磨(せっさたくま)してきたからこそと感じます」
(編集部・川口穣)
※AERA 2022年2月28日号