バレンティンは気分屋というか、言葉は悪いが大きな子どものようなところがあって、自分の気分が乗らない時、たとえばチームの負けが込んできた時などは、目に見えてモチベーションが下がる。その代わり、優勝争いの中でケガから復帰した2015年シーズンの終盤や、祖国オランダの代表として出場した2017年のワールド・ベースボール・クラシックなどではすさまじい集中力を発揮したように、勝ちにはこだわる選手だった。
「とにかく勝つことが一番。金の問題じゃない。日本で9年やって、まだ優勝したことがないんだ。チームは2015年に優勝しているけど、オレはほとんど試合に出ていないから(出場15試合のみ)あれはカウントできない。このまま一度も優勝できずに引退なんてご免だよ。来年(2020年)スワローズが優勝するかもしれないって? そうは思えないな」
熱のこもった口調でそう語ったのは、移籍が取りざたされていた2019年シーズンの終盤である。ヤクルトがマネーゲームに乗るつもりはなかったこともあり、そのオフに2年総額10億円といわれる大型契約でソフトバンクへ移籍。翌年、チームは見事にリーグ優勝、そして日本一に輝き、バレンティンもその輪にしっかりと加わっていた。
ただし、この年は60試合の出場で打率.168、9本塁打。翌2021年は6月13日に古巣ヤクルトとの交流戦(PayPayドーム)でNPB通算300号本塁打、同1000安打と節目の記録を立て続けに達成するも、わずか22試合の出場に終わる。
結局、一軍のシーズン終了を待つことなく退団。時に自身のツイッターでヤクルト時代の写真を添えて「金で幸せは買えない」と意味深な投稿を行い、時には「これが日本で最後のシーズンになる。ファンのためにジングウ(神宮)で記念試合ができることを願う」と呟いて物議を醸すなど、後味の悪さばかりが残る福岡での2年間になってしまった。
バレンティンは今季も他球団でのプレー続行を希望していたもののオファーはなく、今年1月にツイッターで「日本球界からの引退」を表明。そのまま現役を引退するのではとの報道もあったが、本人はまだ幕を引くつもりはなかった。