一方、東京の都心に出店したのがアグリゲート(東京都品川区)の「旬八青果店」。13年の目黒警察署前店の出店に始まり、現在は赤坂店など都心に8店舗を構える。
都心で八百屋を始めるきっかけは、アグリゲートの左今克憲(さこんよしのり)代表が大学生時代に全国を旅した経験。各地に新鮮な青果物があり、「都市の人が手軽に青果物を買えるよう、産地と結びつけたかった」(左今さん)。会社員を辞めた後、都内のスーパーの会長に、青果部門を手伝わないかと誘われ、卸売市場へも連れていってもらった。こうした経験が、旬八青果店の出店につながったという。
旬八青果店でも対面販売が強みとなっているという。青果物を買おうと来店したお客さんが、何にしようか決めかねて迷っていて、スタッフから適切なアドバイスができれば喜ばれる。左今さんが目をつけたのが、産地にたくさんある規格外の青果物。「価値のあるものもある。目利きをすると、付加価値をつけ放題」と左今さんは話す。
旬八青果店は、出退店をしながら試行錯誤している。「八百屋のニーズがあるのはわかる。まずは店舗数がないと物流コストがまかなえない」(左今さん)。青果物だけでなく、弁当や、肉や魚を扱う店舗もある。
旬八青果店では当面、東京での展開に注力し、その後は左今さんの出身地の福岡県などへの出店も視野に入れている。
「都心に八百屋を出店するのは採算面で難しいがニーズはある」というのは、食品ビジネスに詳しい経営コンサルタントの鈴木聖一IDプラスアイ代表。
「都心部に新鮮なものがなかなか入ってこない。スーパーやドラッグストアはほとんど市場を通しているので、集荷してだいたい3日前後かかる。流通上、どうにもならない」(鈴木さん)
生産者と提携し、都市部のスーパーが青果物を直接販売できる「農家の直売所」を提供するのが農業総合研究所(和歌山市)。同社の資料によると、農家が直接持ち込む道の駅などの農産物直売所は、その日の朝に収穫したものが並ぶ。一方、スーパーなどに青果物が並ぶまでには通常、JA(農業協同組合)や卸売市場などを経るため、流通に3~4日を要するという。