優勝を狙うチームの「3割40発100打点」は、他チームのマークが厳しいだけに容易ではない。過去各リーグ72人、計144人いるMVP選手で「3割40発100打点」に輝いた日本人打者は、セ・リーグで4人、パ・リーグで2人しかいないのが現実だ。王貞治(巨人)、山本浩二(広島)、松井秀喜(巨人)、金本知憲(阪神)、野村克也(南海)、長池徳士(阪急)ら、そうそうたる顔ぶれ。村上はそれを狙いにいくというわけだ。

 過去、村上の残した成績において、マスコミの言葉足らずの部分があるので、ここで補足する(下記、太字はリーグ最高)。

  • 1953年中西 太(西 鉄)=120試合 146安打 打率・314 36本 86打点 36盗
  • 2019年村上宗隆(ヤクルト)=143試合 118安打 打率・231 36本 96打点 5盗

「村上は、高校出2年目最高の中西の本塁打記録に並んだ。打点は抜いた」とスポーツマスコミは喧伝した。しかし、ともに全試合出場とはいえ、そもそも試合数が違う。しかも53年の大映などチーム本塁打が計30本、近鉄が計31本の時代。つまり現在で言うなら中西はさしずめひとりで70~80本(2021年中日69本塁打、日本ハム78本塁打)打ったような、とてつもない数字だったわけだ。さらに中西はあとわずかで三冠王(南海・岡本伊三美・318)の打率2位だった。さらにトリプルスリーを達成している。村上の・231は規定打席到達30人中、リーグ最下位。だから、ただ単に数字を比較するには無理が生じる。

【高校出4年目まで】

  • 村上宗隆(ヤクルト)412試合388安打 打率・268 104本296点 4年目MVP
  • 清原和博(西 武)514試合493安打 打率・283 126本330点 無冠
  • 松井秀喜(巨 人)448試合484安打 打率・289 91本272点 4年目MVP

「史上最年少の通算100本塁打」にしても水を差すわけではないが、それは村上が早生まれだからであって、高校出4年までの成績を合算すると、清原や松井のほうがすぐれている部分もあるのは補足が必要かもしれない。ただ現時点の村上が、通算2000安打や500本塁打近くをマークした清原・松井レベルのスラッガーであることは紛れもない事実である。

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