村上の高校時代は清宮幸太郎(早稲田実高→日本ハム)や安田尚憲(履正社高→ロッテ)と並び称される左のスラッガーだった。高校時代、外角に投じられた球を金属バットで強引に引っ張ると、バットが遠回りする「ドアスイング」になる。金属バットならそれでも十分本塁打になる。しかしプロは木のバットのため、投球の内側にバットを入れる「インサイドアウト」で、しならせたバットで投球を運ぶイメージでないとなかなか対応できない。3人の中でもっともその技術が秀でていたのは村上で、左方向にも長打が出た。だからプロでも早く通用したと推測される。プロで「3年連続レフト方向2ケタ本塁打」だ。松井秀喜はそれが1度もなかった。

 過去、高校出の選手で歴史に名をなしたスラッガーを挙げる。張本勲(東映)が首位打者を3年目、野村克也が本塁打王を4年目、王貞治が本塁打王を4年目、榎本喜八(毎日)が首位打者のタイトルを6年目に獲得した。

 比較的最近では、イチロー(オリックス)が首位打者を3年目に獲得。掛布雅之(阪神)が本塁打王、松井秀喜が本塁打王と打点王、坂本勇人が最多安打、岡本和真が本塁打王と打点王(いずれも巨人)と、初タイトル獲得はくしくも全員6年目だった。

 秋山幸二の本塁打王、中村剛也(いずれも西武)の本塁打王、いまをときめく鈴木誠也(広島)でも首位打者は7年目だった。その意味では4年目で本塁打王を奪取した村上はやはり球史を代表する本物のスラッガーである。

 ちなみに5年目の年俸は、鈴木6000万円、岡本8000万円、坂本1億2000万円、村上2億2000万円。高校出5年目としてはイチロー(オリックス)と松井の1億6000万円を抜く史上最高額となった(金額はいずれも推定)。 22年は、先述した「3割40発100打点」はもちろん、「三冠王で優勝に貢献」の期待もかかる。日本選手では野村克也と王貞治しかいない偉業である。(新條雅紀)