■あえて人数を抑える
参加費は1人5千円前後。オンラインに「満席」はない。参加人数が多いほど利益は上がるが、あえて定員は15~20人に抑えている。
理由は「参加者とインタラクティブにコミュニケーションが取れなくなるから」(山本さん)だ。旅にでる最大の魅力は「人との出会い」だと考える山本さんは、オンラインでも双方向のコミュニケーションを大事にしている。
一方、参加者どうしの人間関係が既に構築されている職場や学校単位の貸し切りツアーは百人規模で受け付けており、収益確保の要になっている。最先端の観光を学ぶゼミ学生や留学生の需要も多い。全国の自治体や民間の観光施設、国内外の旅行会社とタイアップし、これまでに手掛けたツアーは約100本。意外だったのは、リアルのツアーには参加しづらい人たちのニーズに応えられたことだ。
「『後ろで、寝たきりの母も見ています』というお客様がいて驚きました。あーそういう利用の仕方もあるんだと。新型コロナが終息しても継続する意義の一つと考えています」(同)
今年1月から始めたのは、全員がアバターに扮して参加するツアー。ご当地ブイチューバーのオファーに応じ、実現した。斬新なアイデアにも果敢に挑む柔軟さが琴平バスの真骨頂だ。
「オンラインツアーを始めたことで、いろんなところから声がかかり、新しい仕事の開拓につながりました。できないじゃなくて、常にやってみる、という構えでいます」(同)
■AIで「3密回避」
3密回避の「混雑予報AI(人工知能)」をいち早く開発した会社が三重県伊勢市にある。さまざまなデータを取り込んで人の流れを可視化するシステムの特許を今年1月に取得した「EBILAB」だ。
同社の小田島春樹社長(36)は「生産効率や商品の付加価値を高める取り組みはこれからますます求められます。そのベースになるのはデータの活用です」と意気込む。
小田島さんはソフトバンクの元社員。12年に退社し、妻の実家が営む伊勢神宮から徒歩1分の老舗食堂「ゑびや」の経営再建に取り組んだ。天気予報や曜日、近隣の宿泊者数などのオープンデータに、グルメサイトからのアクセス数や、従業員が来店客を目で確認して端末に入力して集めた自社データを組み合わせた「来客予測AI」などのITを駆使し、業績アップに導いた。他社にもサービス提供しようと、18年に設立したのが「EBILAB」だ。
20年春の新型コロナの感染拡大は「ゑびや」も直撃した。
この時期、窓越しに店内をのぞくお客さんが普段より多いことに気づいた小田島さんは「店内の混雑状況を『見える化』すれば、混雑を避け、かつ入店してもらいやすくなるのでは」と考えた。来客予測AIのノウハウを応用すれば、短期間で「混雑予報AI」を開発できる自信もあった。