1回目の緊急事態宣言が明けて間もなく、店内のテーブルの空き具合や1日の混雑予報が一目でわかるスクリーンを店頭に設置。スマホやパソコンの画面からも確認できるサービスを始めた。同時に来店客のデータ分析も進め、コロナ禍の前後で40代以上と30代以下の来店客数が逆転し、若い層にシフトしていることをつかんだ。間髪を入れず、インスタ映えする若い人向きのメニューをアピールする戦略に切り替えたところ、店舗前の通行量が2割減るなか、過去最高の売り上げを更新した。
■大切なのは自由な風土
「EBILAB」はコロナ禍で飛躍的な成長を続けている。19年が3600万円だった売り上げが、21年に1億円を突破、22年は2億円を予想している。顧客は海外を含む180社、200店舗。混雑予報AIなどのデータ分析システムは、個人営業の店舗から空港や商業施設まで引っ張りだこだ。
コロナ禍をチャンスに変えた秘訣(ひけつ)について「迅速、的確に情報を集めて何が必要かを判断し、誰よりも早く行動すること」と話す小田島さん。「時代に求められるものを常に追求し、地方にいても起業家として成功できることを証明したい」
パンデミックの有無にかかわらず、変革の時代は到来している。ウェブサイト「J‐Net21」で先進的な企業情報を発信している独立行政法人中小企業基盤整備機構の増田武史広報課長は「世の中はもう変わってしまった、と捉えるべきです。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が明けたら、お客さんは本当に戻ってくるのか。そこに思いが至るかどうかが分かれ道です」と指摘する。
デジタル化や脱炭素化への対応は待ったなしだ。小回りの利く中小企業のほうが変化に対応しやすい、と増田さんは言う。
「大事なのは自社の強みを認識すること。その上で、強みを生かして新しいモノやサービスに転用していく柔軟性が必要です。若い従業員のやる気や感性をうまく引き出し、自由にアイデアを出せる企業風土が求められています」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年3月7日号