キャリアのスタートが大衆演劇。しかも“100年に一人の天才女形”という肩書もあって、舞台にしても映像にしても、ある時期までオファーが来るのはそのイメージとリンクするものが多かった。それを全く違う形で打ち破ってくれたのが、赤堀さんの「世界」だった。
「何をやるにしても、自分がチャレンジできるかできないかを大事にしているんです。今回はそのチャレンジがとても多い気がして、心臓が締め付けられるような不安や苦しさと、鼓動が高鳴っていくワクワクした期待感を、両方いっぺんに体験しています(笑)。殺陣もあるのですが、それも僕が普段やっているような剣舞の要素は皆無で、ちゃんと人の肉に刀が入っていく感触を可視化していきたくて。絶対にチャンバラにはしたくないというか……。とにかく生々しさを持ってやっていきたいです」
得意分野の話になると、想像力たっぷりに生き生きと話しだすが、「そういうご自分のイメージは、演出家に伝えるほうですか?」と質問すると、「それはまったくしないです」と即答した。
「基本的には、監督や演出の方に言われたことをまずやってみる。僕の感覚では、役者というのはそういう職業だと思っています。だから、『好きにやっていいよ』みたいに言われると戸惑いますね。『こうしてほしい』とはっきり言ってもらったほうが、自分の中から新たなイメージが湧きやすい。せっかく新しい作品に取り組むわけですから、自分の感覚とは違う何かを発見したり発掘したりしたい。役を自分に寄せていくのではなく、人から意見されてあれこれ格闘しながら、役に近づいていきたいんです」
最近では、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や、「ミステリと言う勿れ」「封刃師」「六本木クラス」など、テレビドラマでの活躍も目立つが、その背景には、「2023年は舞台の年にしたい。そのために22年はテレビで露出を多くして、自分に興味を持ってくださった方に劇場まで足を運びたいと思ってもらえたら」と、そんな希望があった。