「舞台に興味を持ってくださる方の入り口を増やしたいというのが、僕が映像をやる大きな理由の一つですね。わざわざ時間を作って、チケットを準備して、劇場まで足を運ぶということって、並大抵の労力じゃない。今はそれこそスマホで何でも簡単に見たいものが見られてしまう時代で、ポケットの中に所持しているものの中に娯楽がいっぱいある。それはそれで便利だけど、劇場で生まれる心のふれあいは、スマホで得られる感動とはまったく違うんです。僕のルーツは旅役者なので、その土地土地の人に届けに行くことの大切さも身に染みてわかっています。劇場に来てもらうだけじゃなく、こちらから行くことも大事。今回の『蜘蛛巣城』は、全国ツアーもあるからなおさら嬉しいです」

 早乙女さんが感じる舞台のよさはほかにもある。

「めちゃくちゃいいものを見たとしても、人って、時間がたてば忘れるんですよね。舞台は、形に残らないそのときだけのもの、消えていくものだから、僕らが舞台で達成感を得られたからといって、それが自分の自信にはつながらない。今自分がこれをできたからといって、来年同じことができるかどうかわからない。その一回性の緊張感が、自分を奮い立たせてくれる部分でもあると思います」

(菊地陽子、構成/長沢明)

週刊朝日  2023年1月27日号より抜粋

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