危機が長引けば、もっと怖い事態も想定される。りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは「心配なのは、必要なモノが手に入らなくなること」と言う。
「ロシアやウクライナの生産量が多いアルミニウムやパラジウム、ニッケルといった資源や農産物が不足すれば、サプライチェーンの混乱に拍車がかかるし、食糧危機のリスクも出てくる」
さらに、欧米日の経済制裁の反動が懸念されるという。米国や欧州、日本は、国際的な決済網からロシアの一部銀行を締め出した。ロシアの企業や個人は、国外とのお金のやり取りが制限される。すると欧米日の側も、借金の返済や代金の支払いといった、返ってくるはずのお金の動きも滞る。
相場研究家の市岡繁男さんは、ロシアへの制裁で「これまでグローバル化が進んできた経済が、東西冷戦時代へ逆戻りする懸念がある」と言う。
「冷戦終結後、米国やドイツ、日本など旧西側諸国は旧東側陣営の安価な労働力を得ることで生産量を効率的に増やし、東側諸国へ市場を広げることで成長を続けてきました。ところが、今回のウクライナ危機でロシアなどとの経済関係が途切れれば、資源や食料は不足し、最悪の場合、モノが作れなくなる事態も想定されます。その結果、インフレは加速し、利上げも迫られる。生活必需品の買い占め騒動が起きたオイルショックよりも、もっと広範囲で、ひどい状況に陥る可能性もあります」
コロナからの回復がままならないまま“第3次オイルショック”に見舞われれば、大変なことになる。(本誌・池田正史、佐賀旭)
※週刊朝日 2022年3月18日号