球審は1球1球動くので、ひと昔前は汗がプロテクターに染み込んで、真夏なんて汗の臭いで自分が気持ち悪くなるぐらいでした。試合が終わるとすぐ脱いで、とにかく消臭剤を使っても、何とも言えない「部活のような独特な臭い」が当たり前でした。

 現在は香水が審判にも波及しています。審判は4人制ですから、試合前に4人整列するとお互い違う匂いがしました。若い審判はそれこそいつかの流行歌に登場するドルチェ&ガッバーナとかいうヤツ。私なんか、洗濯柔軟剤のダウニーで、実家のお線香の匂いを消しています。

 まあ私が言わんとすることは、ネット裏の高価な座席で観戦しているファンのかたも知らないでしょうが、テレビでは映らない部分、「グラウンドレベルではすごくいい匂いがしますよ」ということ。いま考えれば香水を流行らせた「さすがBIGBOSS」です。

【2】大谷翔平は日本時代から、審判の体調まで気遣う青年だった

 2021年「リアル二刀流」で投手として9勝、打者として46本塁打を放ってアメリカン・リーグMVPに輝いた大谷翔平選手。プレーばかりか、野球を心底楽しむ笑顔やグラウンドのごみを拾う気配りはファンの心を鷲づかみにした。大谷は、日本時代から審判へも心を配っていた。

 私は四十肩で、ファウルボールのあと、ボールをピッチャーに投げ返せなかった。そういうのをうっとうしがるピッチャーは多いです。だから、なるべくキャッチャーに渡していたんですが、どうしても1度投げなくてはいけない場面になったとき、大谷翔平選手は察してくれたんでしょう。イニング交代のとき、すかさず僕のところに全速力で走ってきました。

「佐々木さん、肩、痛いでしょうから、ボールを取りにきました」

 審判生活29年、そういう気遣いをしてくれたピッチャーって大谷選手だけでした。

 どの選手にしても第1打席に、球審に「こんにちは」とか「お願いします」って入ってきますが、大谷翔平選手と松井秀喜選手の2人だけは必ず「〇〇審判、こんにちは」って、苗字を付けてくれました。人間性でしょうね。

 試合が終わると「お疲れさまでした」「ありがとうございました」。審判にゴマをするというのではなく、コミュニケーションが自然体でできる。そういうのが伝わるからメジャーでも人気が出るのでしょう。

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