「宇宙の原理は数学という言語で記述されている」。地動説を唱えた天才物理学者、ガリレオ・ガリレイが残した言葉だ。なぜ宇宙をはじめとする森羅万象は、数式によって厳密に書き下せるのか? 物理法則を探求し続けた科学者たちの歩みを 『宇宙は数式でできている』(須藤靖著、朝日新書)から抜粋して紹介する。
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■宇宙のすべてを説明するアインシュタイン方程式
万有引力の法則をはじめとするニュートンが創り上げた物体の運動に関する物理学の体系は、ニュートン力学と呼ばれ、近代科学の礎となりました。あえて科学的でない表現を用いるならば、「神様が世界がどう振る舞うべきかを定めたルール」を発見したわけです。
しかし、これではまだ物理学者は満足できません。なぜ世界はこの法則に従っているのか、そもそも二つの物体間に万有引力が働く理由は何か。ニュートンの法則は、それについては何も答えてくれません。
この例は「法則」が実はエンドレスな構造をしていることを意味します。決して天才ニュートンの責任ではありません。そもそも科学とは、ある謎が解けた瞬間に、さらにより根源的な謎が明らかになるという性質を持っています。その意味において、科学に終わりはなく、いつまでも果てしなく続く謎解きと発見の旅なのです。
そしてニュートンの法則よりもより根源的な理論がアインシュタインの一般相対論です。ニュートンの法則がなぜ、そしてどこまで正確に成り立つのかを考え抜き、革命的な世界観を発見したのがアインシュタインなのです。
彼が発見した一般相対論によれば、万有引力(重力)の起源は次の一言で説明されます。
「質量を持つ物体は周りの時空を歪める」
それにしても、これはにわかには信じがたいほどぶっ飛んだ説明です。時空と重力が互いになぜ関係するのかまったく理解できないでしょう。仮にアインシュタインがニュートンの時代に突然このような主張をしたとしたら、頭がおかしなやつだと相手にしてもらえなかったに違いありません。