ホルモンバランスの乱れがPMSの原因ではないか、そう考える人は多いようだが、実際は異なるという。
■ホルモンに対する感受性が異なる
「PMSの女性とそうでない女性で、女性ホルモンの状態に差はありません。PMSはホルモンが正常に働いているからこそ起こるものといえます」(小川医師)
いつきウィメンズクリニック理事長で相良病院婦人科部長も務める城田京子医師もこう話す。
「ホルモンに対する『感受性』が人によって違うことが考えられます。例えば、つわりは妊娠初期のホルモンの変動により起こりますが、すごくつらい人もいれば軽い人もいますね。PMSもそれと似ていると思います」
ホルモンがどこにどう作用するか、それによりどのような反応が起こるかは人によって違いがあるため、PMSの症状や程度は個人差が大きい。
症状は冒頭に記したもの以外にもたくさんある。長年の原因不明の不調が、婦人科などを受診して、初めてPMSだとわかることも少なくない。
「よくなったり悪くなったりと、つらい症状を周期的にくり返す場合、女性ではまず月経との関連を確認することが大事です」(小川医師)
月経前に起こる不調として、PMSのほかに、「月経前不快気分障害(PMDD)」や「既存疾患の月経前増悪(PME)」「月経関連片頭痛」などもある。PMDDはPMSの重症型で、精神症状が主となるもの。PMEはその人がもともと持つ病気が月経前に悪化することをいう。
「喘息やアトピー性皮膚炎、うつ病などは、月経前になると症状が悪化しやすいです。女性は、どんな病気でも月経前に悪化することが多い傾向があります」(同)
冒頭で記したように、PMSに悩む女性は多い。一方で治療している人は少なく、働く女性におこなった同調査では、63%が「PMSの症状はあっても何も対処していない」と回答した。
■約6割の女性が退職や昇進辞退を検討
多くの女性が悩みながら受診しない理由は、「生理はあって当たり前。つらいのも仕方ない、とあきらめている」「仕事などで忙しい」「受診して治療すれば改善することを知らない」などが想定される。