ここまで、がんの大きさを目安に治療法の選択を述べてきたが、がんの評価は大きさだけではないことを念頭に置いておこう。がんの場所、悪性度、もともとの腎機能、年齢、合併症なども考慮される。例えばがんが4センチ以内でも、がんが腎臓内に埋もれているような場合には、全摘がおこなわれることもある。逆に、大きくても切除しやすい場所にある場合や、将来的に腎機能の低下が予想されるような場合には、全摘せずに部分切除が考慮されることもある。

■小さいがんなら監視療法、局所療法も選択肢に

 では、手術を選択しないのは、どのような場合だろうか。

 まず、がんの大きさが2センチ以下に加えて、患者が高齢、基礎疾患があるなどの場合には、定期的な検査で経過をみる「監視療法」が考慮される。凍結療法やラジオ波による焼灼などで、がんだけを壊死させる「局所療法」も選択肢となる。

 また、転移が複数ある場合にも、通常、手術ではなく、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた薬物治療をおこなう。ただし薬物療法の効果次第では、腎臓や転移したがんの手術を検討する。

 腎がんの多くは、健診などで偶然、初期の段階で見つかる。適切な治療を受ければ根治率も高く、7センチ以下で腎臓にとどまるなら、5年生存率は90%を超える。また、全般的に小さい腎がんは進行が遅いと考えられている。神戸市立医療センター中央市民病院の山崎俊成医師はこう話す。

 「ロボットでの部分切除は難しいといわれた場合でも、ロボット手術を多く手がける病院では、ケースによっては可能になることがあるかもしれません。納得して治療を受けるために、セカンドオピニオンをとるのもいいでしょう」

【取材した医師】
神戸市立医療センター中央市民病院 泌尿器科医長 山崎俊成医師
神奈川県立がんセンター 副院長・泌尿器科部長 岸田 健医師
(文/別所 文)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

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