アンネ(左)の日記から現代に現れたキティー。誰もが知る物語が新たな息吹と視線を与えてくれる。全国公開中 (c)ANNE FRANK FONDS BASEL, SWITZERLAND
アンネ(左)の日記から現代に現れたキティー。誰もが知る物語が新たな息吹と視線を与えてくれる。全国公開中 (c)ANNE FRANK FONDS BASEL, SWITZERLAND
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『アンネの日記』が驚きのイマジネーションで生まれ変わった。映画「アンネ・フランクと旅する日記」。ホロコーストの記憶を受け継ぐアリ・フォルマン監督が、作品に込めた思いとは。AERA2022年3月21日号の記事を紹介する。

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 舞台は現代のオランダ・アムステルダム。いまは博物館になっている「アンネ・フランクの家」に展示された『アンネの日記』から一人の少女が現れる。文字に息が吹き込まれ、少女の姿へと変わる見事なビジュアルに息を呑(の)む。彼女はアンネが日記に綴(つづ)った空想上の親友“キティー”。この物語のもう一人の主人公だ。アリ・フォルマン監督がこのアイデアについて語る。

「最初にアンネ・フランク基金から『アンネの日記』の映画化を打診されたときは『無理だ!』と思いました(笑)。彼女はあまりにも有名なアイコンで、その物語はこれまでに様々な形で語られてきていますから」

■ユーモラスで意地悪

 ホロコースト生存者の両親を持つ監督にとって、アンネは突出した存在ではなかった。

「子どものころ、両親や周囲の人々にアンネの日記よりもっと過激で残酷で恐ろしい話を聞かされてきたんです。今回あらためてアンネという人物に向き合い、長い時間をかけてキティーに命を吹き込み、現代に蘇(よみがえ)らせて過去と現在をつなぐ、という答えにたどり着きました」

 キティーは時空を超えてアンネと再会し、また現代の若者と触れ合いながらアンネに起きた出来事を知っていく。監督はキャラクターや物語を「教科書的に」しないよう心がけた。

「アンネはとても複雑な少女です。天才的な一面やユーモアのセンスもあり、意地悪な面もある。興味深く、おもしろい人物として描こうと思いました」

 その悲劇的な運命を直接的に描くこともしなかった。代わりに物語は思わぬ展開をみせる。キティーは現代のアムステルダムでアフリカからの難民少女アヴァに出会い、ある行動に出る。

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