ウクライナ南東部にある欧州最大級のザポリージャ原発はロシア軍の攻撃で火災が発生した。鎮火され、周囲の放射線量に目立った変化はなかった
(photo:Zaporizhzhia Nuclear Power Plant/Anadolu Agency via Getty Images)
ウクライナ南東部にある欧州最大級のザポリージャ原発はロシア軍の攻撃で火災が発生した。鎮火され、周囲の放射線量に目立った変化はなかった (photo:Zaporizhzhia Nuclear Power Plant/Anadolu Agency via Getty Images)

■ドローンも大きな脅威

 特にリスクが高かったのは4号機のプールだ。4号機は、定期点検中で運転しておらず、核燃料1535体はすべて原子炉からプールに移されていた。

 通常はポンプでプールの水を循環させて冷やしているが、電源を失って冷却は止まり、地震3日後には水温が84度まで上がった。水が沸騰して失われてしまうと、核燃料が発火して損傷し、放射性物質が大量に環境中に放出されてしまう。

 専門家は、天井をねらってドローンで爆弾を投下する方法は、大きな脅威だと指摘している。

 テロや軍事攻撃の標的になる核施設は、原発だけではない。

 東京駅から約110キロの茨城県東海村に日本原子力研究開発機構の東海再処理施設がある。ここに、使用済み核燃料を処理した残留物である高レベル放射性廃液が336立方メートル貯蔵されている。含まれる放射性物質の量は、東電の事故で大気中に放出された量より多い。

 この廃液も、常時冷却しておかなければならない。停電すれば約3日で沸騰し、放射性物質が放出される恐れがある。多重化された安全装置を備えているが、兵器による破壊に耐えられるかどうかは不明だ。

 東芝の元原子力プラント設計技術者の後藤政志さんは言う。

「原発は攻撃してくる相手に核兵器を与えるようなもの。それどころか、核兵器より、放出する放射性物質の量が桁違いに多く、被害は広範囲、長期間続く場合がある」

 きちんとしたリスク評価と、他の電源にはないそのリスクを適切に管理するにはどうすればいいのか、議論が必要だろう。(ジャーナリスト・添田孝史)

AERA 2022年3月21日号より抜粋