♪何も言えなくて まだ愛してたから
歌い終わると、満場の温かい拍手に包まれた。避難所がかすんで見えた。
その後も石巻市内を中心に、南三陸町や岩手県陸前高田市など三陸沿岸部へ足を運んだのは数十回に及ぶ。泉谷しげるさん、嘉門達夫さんらと現地の町おこしイベントにも協力した。その際、何度か歌う機会があったが、本格的に音楽活動を再開したのは2013年2月から。
「懲役2年・執行猶予4年の懲役分は実刑と思って自粛する」
中村さんの中では、その思いが強かった。ミュージシャンの三宅伸治さんのサポートで重い扉を開けるまで、結局3年かかった。
そして現在。コロナ禍による自粛から少しずつライブ活動を再開させている。
「香積寺のご住職、避難所で声をかけてくれた女性、被災者の皆さん。そして大きな拍手。今も忘れられません。あの体験がなかったら、音楽はやめていたかも知れないです」
被災地での経験を経て、今日も大好きな歌と向き合っている。
(高鍬真之)
※週刊朝日オンライン限定記事
●中村耕一さんのライブ情報
4月2日、3日・横浜パラダイスカフェ、 5月1日・渋谷エッグマン。その他のライブ情報は、中村耕一オフィシャルサイトを