シリア内戦でどれだけ多くの残虐行為が行われてきたか――。前線に入り込むことがあれば、ウクライナの戦場はますます市民を巻き込んだ悲惨なものとなりそうだ。
■米後方支援で「アフガン化」の可能性
すでに主要都市のハリコフ、マリウポリでは病院や劇場など無差別に攻撃が行われ、首都キエフにもロシア軍が迫っている。ロシア軍の実力からすれば、空爆とミサイル攻撃によってキエフを焼け野原にしてしまうのは容易という。
「しかし、いきなりそこに踏み込んでしまうと、相当非難を受けるし、ロシア側にもかなりの犠牲者が出るでしょう」
ほかの都市への攻撃とは違い、「キエフへの攻撃は街を焼き尽くすことが目的ではありません。首都を包囲して圧力をかけ、外交交渉をにらみながら、ゼレンスキー政権を退陣させるためにどの程度攻撃をすればいいか、ウクライナ側の腹の内を探っている」と話し、こう続ける。
「いきなり最悪のシナリオをとるということはないはずです」
軍事的にも、そのシナリオを遂行するための準備はまだ整っていないと思われる。兵頭さんは、こうも言う。
「アメリカのシンクタンクもあと1週間くらいは現在の膠着状態が続くのでは、という見方を示しています。シリアからの傭兵もまだ到着していません。アメリカは直接、戦闘には介入しないものの、ウクライナに資金、兵器、情報を提供することで、相当、戦闘の長期化に向けた関与をしています。『アフガン化』するのは背後に支援する国がある、ということです」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)