ロシア軍のウクライナ侵攻を食い止めるため、膨大な数の対戦車/対空ミサイルが西側諸国からウクライナに供与され続けている。この状況に思い浮かぶのは、1979年に旧ソ連がアフガニスタンに侵攻した際、米国が大量の携帯型地対空ミサイルをアフガンゲリラに供与したことだ。アフガニスタン戦争は泥沼化し、「ソ連のベトナム戦争」と呼ばれた。ウクライナ侵攻は「アフガン化」するのではないか――その可能性について防衛省防衛研究所の兵頭慎治政策研究部長に聞いた。
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米有力紙ニューヨークタイムズおよびCNNテレビの報道によると、米国とNATO加盟国はすでに「ジャベリン」「NLAW」など対戦車ミサイル1万7千基以上をウクライナに提供。ドイツは携帯型地対空ミサイル「スティンガー」500基に加え、「ストレラ」2700基をウクライナに送る。
この数について、兵頭部長は「それほど驚くことではありません」と言う。
「ロシア軍がウクライナに侵攻する可能性について、アメリカは相当前から把握し、武器供与を行ってきました。実際、いま、ロシア軍は苦戦を強いられていますが、ウクライナ軍は相当効果的に対戦車・地対空ミサイルを使ってロシア軍を撃退していると思います。やはり、これくらいの数量が揃っていなければ、ウクライナ軍は善戦できなかったでしょう。しかも米国は兵器を追加供与しようとしています」
バイデン米大統領は16日、ウクライナに追加で8億ドル(約950億円)の武器支援を発表。ジャベリン2千基、スティンガー800基のほか、ドローン兵器も提供する。
■シリアから「プロ」4万人
「ロシア側は当初、2週間程度の軍事オペレーションを想定し、作戦の早い段階でのキエフ陥落を考えていたでしょう。しかし、アメリカをはじめとする西側諸国の兵器供与によって、その想定が大きく崩れてしまった」
そこで懸念されるのが戦闘の泥沼化、ウクライナの「アフガン化」だ。実際、すでにその兆候は表れているという。