「流行直前に打つべき」
有効期限が短かったのは、3回目に向けてまず届いたのがそれ以前の接種で余ったワクチンだったからだ。ほとんどの区で有効期限が初めて切れたのは4月以降。別の区の担当者も言う。
「注文して届くのに3週間もかかって現場はバタバタでした。3回目が始まった頃は高齢者の接種率が高かったので、それを加味して入荷の希望数を出しました。しかし、実際は若者の接種率は低いし、春には感染拡大も一時落ち着いたので、予約があまり入らなくなったんです」
20、30代の2回目までの接種率は約80%だったが、3回目は40、50%台にとどまる。
「個人が『打たない』という判断をして、どうしても使われないのであれば、捨ててしまうのはいたしかたない部分がある」(厚労省予防接種担当参事官室)
だが、3回目接種の開始が遅かったから、こんな事態を招いたという指摘もある。
イスラエルや米国などでは昨年8、9月に3回目が始まったのに、日本は昨年12月。「初回接種を希望する方を昨年11月までに終わらせるという中で、それ以前に3回目を始めるのはどうなのか」(同室)と言うが、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長はこう話す。
「余るくらいなら、3回目をもっと早く打ち始めるべきだった。2回目の後は5カ月を空けるとしていましたが、科学的な根拠はありません」
4回目接種が始まっている。
「早く進めるべきです。希望する人が打てないことが問題です。また、日本では接種は5歳以上ですが、海外では6カ月の乳児にも適用拡大されています。(新型コロナは)季節性があると指摘されていますから、今年も夏に流行することはわかっていたはずです。本来は夏の流行の直前に4回目を打つべきなのです」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2022年8月8日号