第7波到来中の新型コロナウイルスで、ワクチンが大量に廃棄されている。有効期限が切れたためだが、政府の遅い対応が原因と指摘する声が上がる。AERA 2022年8月8日号より紹介する。
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「発熱患者が増えて、クリニックは手いっぱいです」
新型コロナウイルスの第7波が到来し、東京都内のある開業医は対応に追われている。その片手間にワクチンを次々と打つ。
「うちの区では7月末で大量の在庫が有効期限を迎えるので、一人でも多く接種してもらえるよう、定員に満たなくても打っていいと区から言われました」
対応に苦慮した現場
ワクチン廃棄は全国的な問題だ。後藤茂之厚生労働相は5月の会見で「廃棄数の調査は現場の負担の問題などもあり、現時点で行うことは考えてはいない」と言及。そこで本誌は東京23区に取材したところ、3回目接種が始まった昨年12月以降、少なくとも3万4321バイアル(瓶)が有効期限切れにより廃棄されたことがわかった。約51万837回分に当たる(1バイアルでファイザー製は6回、モデルナ製は15回と換算)。
政府は計8億8200万回分のワクチン購入に2兆4千億円の予算を計上している。単純計算で、1回当たり約2721円。これを取材で得た数で計算すると、23区で約13億8998万円分が有効期限切れで廃棄されたことになる。そのワクチンのうち、ファイザー製は442バイアル(2652回分に換算)で、ほとんどがモデルナ製だった。
現場では、無駄にしないように工夫をしている。東京都葛飾区の接種会場へのワクチン配布計画を考えた同区医師会の看護師、佐藤純さんは言う。
「モデルナは1バイアルあたりの接種人数が多いので、このバイアルを開けるかどうかギリギリまで考えます。急なキャンセルが出ると、穴埋めのために当日の予約枠を開放したり、時には余ったワクチンをバイクで他の会場に運んだりしました」
それでも大量の廃棄は避けられなかった。5月にモデルナ製約6万4千回分を廃棄した品川区の担当者はこう明かす。
「1月に有効期限が5月までのワクチンが届いたので、2月に届く分は夏までのものと思ったら、2月下旬に届いたのは前回と同じ期限のものでした。使える期間が3カ月あるかないかで対応に苦慮しました」