福士:僕が緊張するのは、始まる前の1分間だけ。舞台に上がる直前の1分だけ緊張し、ひとたび舞台に上がってお芝居を始めたら、緊張はなくなっていく気がします。
宮野:すごい、僕は真逆だ。舞台に上がる前のギリギリ1分間だけ緊張しない。スイッチが入り、「やるしかない」と腹が据わるのが直前の1分間ですね。
――取材中も笑いが絶えず、仲の良さが伝わってくる。二人の関係を言葉にすると?
宮野:今回のお芝居での関係性を意識しているわけではないのですが、やっぱり「バディ」なのかな、と思っています。先ほど、普段はそれぞれが違うフィールドで活動していて、という話をしましたが、今回のお芝居でも、「医者」と「口出し屋」と立場は違う。それでも、それぞれの価値観でつながっていく話なのですが、実際の僕たちの関係でも、「映像の世界ではこういうことを感じている」と蒼ちゃんから聞けば興味がわくし、「声優の世界ではこうなんだ」といった話も素直にできる。「仲間」とも「友達」とも違う、「バディ」っていいなと。
福士:僕にとっては、マモちゃんは「友達」ですけどね(笑)。
宮野:あはは! いま熱く語ったのに(笑)。「友達」って、僕だけ語ってしまった人みたいになっている!
福士:でも確かに、マモちゃんのように心置きなく接することができる人はほかにはいないです。10歳も年齢が離れているのに、ついちょっかいをかけてしまう。しかも、それを許容してくれるんです。同時にお互いすごく根が真面目だな、と思うこともあります。ふざけている時は本当にふざけているのに、台本の話になったら、急に熱く真剣に語り合う。その振り幅が大きくて、こうした関係を築ける相手は、ほかにはいないなと思っています。
(構成/ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2022年3月21日号