この肉体的変化は、不死川玄弥が持っている唯一無二の才能「鬼喰い」によってもたらされたものだ。玄弥は鬼を喰うことによって一時的に鬼の体質になれる特殊能力の持ち主だった。肉体が傷ついても鬼と同じように再生され、パワーも飛躍的に高まる。煉獄vs猗窩座を知っている我々には、再生能力がいかに重要であるかはもはや説明不要であろう。玄弥の「鬼喰い」の詳細は刀鍛冶の里編で語られることになり、アニメ3期の見どころのひとつだ。
■兄を激怒させた禁忌と兄との確執
しかし、「鬼喰い」は人間としての理を外れる重大な禁忌である。鬼が人間を食糧としていることから、鬼を喰う行為は連鎖的に「人喰い」も想像させる。さらに、不死川兄弟はかつて最愛の母と弟妹を「鬼化」の事件で失っており、鬼との因縁がきわめて深かった。弟の「鬼喰い」を知った実弥は激怒し、周囲も手がつけられないような状態になる。
<何だとォ? 今何つった?テメェ… 鬼をォ? 喰っただとォ?>(不死川実弥/15巻・第133話「ようこそ…」)
荒れ狂う実弥を炭治郎が何とか押しとどめたが、実弥の玄弥への「脅し」は止まらなかった。炭治郎に「玄弥を殺す気か」と問われると、怒りの形相のままこう答えた。
<再起不能にすんだよォ ただしなァ 今すぐ鬼殺隊を辞めるなら許してやる>(不死川実弥/15巻・第133話「ようこそ…」)
■秘められた兄の愛情
このように実弥は「弟はいない」と言いつつも、なんとかして玄弥に鬼殺隊を辞めさせようとしている。それはたった1人生き残った弟を鬼の脅威から守るためだった。のちに実弥は、玄弥の危機に際して、自分が鬼殺隊として戦い続ける理由を語っている。
<お袋にしてやれなかった分も 弟や妹にしてやれなかった分も お前が お前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが そこには絶対に俺が 鬼なんか来させねぇから……>(不死川実弥/19巻・第166話「本心」)