「ヴァイオレット」でいい感触を得て、喉の使い方のバリエーションを増やしたいと感じた。

「自分が気づいていない自分の発声法がまだまだあるかもしれません。だから、近々レッスンを受けようかと考え中です」

 年齢とキャリアを重ねるごとに、ありのままの自分と仕事をする自分との境界線がなくなってきているともいう。

「最近の私は生活と音楽がとても近づいています。ふだんから電車や路線バスを利用していて、その自然なままの感覚で歌えるようになってきました。そう、5年くらい前にゴルフを始めたんですよ。ゴルフって、ちょっと歌と似ています。トレーニングしても、本番では必ずしも練習の成果が表れるわけではありません」

 そのときのメンタルに左右されるのが歌とゴルフの共通点らしい。

「ゴルフでコースに出ると、緊張で練習通りにはいきません。それでも練習に練習を重ねると、身体から力が抜けます。すると自分なりのコツをつかめて、飛距離が伸びることもあります。その感覚は歌やお芝居にもあって、緊張がほどけて自分を解放させることができると、いい結果になります。ゴルフも歌もお芝居も、こつこつ努力を続けて、5年経って振り返ると、成長している自分に気づけます」

 デビューして40年を経てなお、自分の新たな可能性を追い求めている。

「ゴルフもコンサートも一発勝負です。その一回に自分の持つ最大を発揮できるためになにをすればいいのか。模索しています」

 信頼できるメンバーと毎年1枚新しいアルバムをつくり、映画やドラマの仕事を無理のないペースで続ける今の状況に心地よさを感じている。

「あわてずに、あわてずに、と自分に言い聞かせています。結果を急がずに、じっくりと。そうして一日一日を充実させることで、今よりももっと楽しい次の10年が待っている気がしています」

(ライター・神舘和典)

原田知世(はらだ・ともよ)/歌手、俳優。1982年デビュー。「時をかける少女」「ロマンス」「シンシア」など数多くの名曲を歌ってきた。俳優としては映画『時をかける少女』『天国にいちばん近い島』をはじめ数多くの作品に出演。最近はドラマ『あなたの番です』『スナック キズツキ』などで注目されている。6月から「原田知世 40周年アニバーサリーツアー2022」がスタート。http://haradatomoyo.com/

週刊朝日  2022年4月1日号

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