実際に、原田には強いミュージシャンシップを感じる。2014年のアルバム『noon moon』からはほぼ毎年、良質な作品を発表し続けてきた。
「俳優と言われても、歌手と言われても、どちらの私も大切です。でも、40年間続けてこられたのは、いつの時代も親しいチームで音楽制作を続けてきたおかげです」
俳優としても歌手としても質の高い仕事を続けることが、それぞれにいい効果をもたらしている。
「『fruitful days』は前期、後期、2度に分けてレコーディングしました。途中でドラマの撮影が入り、中断したので」
21年の後半、原田はテレビ東京系のドラマ『スナック キズツキ』の主演を務めた。アルコールを提供しないスナックのママ、トウコの役。この店には心が傷ついた人だけが訪れる。
「前期はベーストラックと仮歌を録りました。その後ドラマの後のレコーディングでは本番の歌入れを中心に行っています。『スナック キズツキ』の役柄はとてもチャレンジングでした。経験のない役柄を演じたことで勇気も得られて、そのマインドのまま後半のレコーディングに臨めたのはよかったです」
後期のレコーディングでは、先行シングルの「ヴァイオレット」もレコーディングした。原田の透き通るような声が魅力的なナンバーだ。清潔感があり、それでいてかすかにエロスもにじむ。
「私にとって新しいタイプの曲をやってみたいという思いが強くあり、作詞・作曲を今回初タッグとなる川谷絵音さんにお願いしました」
川谷は、ゲスの極み乙女。やジェニーハイなど五つのバンドを並行してやっている。
「川谷さんのバンドのなかではindigo la Endのテイストが私はとくに好きです。メロディーに懐かしさを感じます。その気持ちを川谷さんにお伝えして『ヴァイオレット』が生まれました。地声と裏声を使い分ける難易度の高い歌ですけれど、チャレンジしがいのある名曲でした。かつての私にあって、近年の私の歌ではあまり試みていなかったものを引き出していただいたと思います」