■機能温存しながら最大限の摘出を目指す
脳腫瘍が疑われた場合、まずはCTやMRIによる画像検査で腫瘍の位置や大きさなどを確認する。代表的な悪性脳腫瘍である神経膠腫の治療では、手術でできるだけ腫瘍を取り除くのが基本だ。慶応義塾大学病院の佐々木光医師は言う。
「手術では機能温存に留意しつつ、最大限の摘出を目指します。腫瘍が脳の深部や重要な機能が集中する脳幹近くにある症例など、リスクが低くなく可及的摘出が難しい場合、生検で一部の組織を採取します。無症状でかつ摘出が難しい場合は、定期的なMRI検査などで慎重な経過観察をすることもあります」
脳腫瘍は手術や生検での病理組織検査の結果で診断される。神経膠腫もさらなる分子診断で、乏突起膠腫や星細胞種などの組織型が判明する。神戸大学病院の篠山隆司医師はこう話す。
「低悪性度のグレードIIの乏突起膠腫と判明すれば、多くは進行がゆっくり。腫瘍を手術でほぼ取り除ければ経過観察となり、放射線や化学療法をすぐにおこなわない場合もあります。残存した場合でも化学療法や放射線に対する反応がよく、適切に治療できれば、再発を予防できる場合も多いです」
術後の治療では、化学療法に放射線を併用する場合もある。乏突起膠腫で最も良好な成績が示されている治療法だ。
「脳が耐えうる放射線の線量には限度があり、放射線治療は原則として一生に1回まで。万一の再発時のために、放射線療法を温存しておく場合も多いです」(佐々木医師)
一方、下垂体腺腫、神経鞘腫、髄膜腫など良性腫瘍の治療はどのように進めるのだろうか。
■小さい腫瘍はガンマナイフ。下垂体腺腫は経鼻内視鏡で
神経鞘腫は聴力低下やめまい、ふらつき、下垂体腺腫は視野障害で判明しやすい。下垂体腺腫でも、若い女性に多いプロラクチン産生下垂体腺腫は、月経不順や乳汁分泌の症状が表れる。
「症状があれば治療が必要ですが、脳ドックなどで発見されて無症状であれば経過観察となります」(篠山医師)